こんにちはᐕ)ฅ

ワインから「白い花」を感じると聞いたら、頭の中で花屋の棚を探したくなりませんか。
香りの名前当ては楽しいけれど、外したら不正解という遊びではありません。

ぼくの独断と偏見では、香りの単語をたくさん言うより、「どの仕事や時間から来たの?」と考える方が面白い。
専門家の表現に気後れする人にも、鼻で感じたことから造り手へ近づく入口を渡したいと思います。

ワインの香りは、ブドウに由来する成分、発酵などの醸造、熟成による変化が重なって感じられます。
最初に3つの入口を見ておくと、横文字の香りの一覧が少しやわらかくなります。

  1. ブドウと畑から来る要素
  2. 発酵と醸造で生まれる要素
  3. 熟成と時間で変わる要素
ブドウと畑、発酵と醸造、熟成と時間という香りの3つの入口を示す概念図
左のブドウ、中央の醸造、右の時間から、下のグラスで感じる香りへつなぐ図です。1つの香りに原因を1つ割り当てる図でも、一次・二次・三次香をそのまま並べた図でもありません。

この3つは厳密に切り離された箱ではありません。
左から右へ1つずつ原因を当てるのではなく、3つの矢印が下のグラスへ重なる図です。
「どの場面が関わったか」を考えるための地図です。

1|ブドウと畑が持つ香りの材料

ブドウには、品種や成熟の状態によって異なる香りの材料があります。
ワインを嗅いだとき、柑橘、りんご、ベリー、花、ハーブなどを思い浮かべることがあります。
ただし果物らしい香りが全部、ブドウの中で完成していたわけではありません。WSETの香りの解説は、ブドウにある材料から発酵中に引き出される香りや、発酵の反応で生まれる香りも区別しています。

ただし「この品種なら必ずレモン」とは決められません。
土地、収穫の時期、醸造の仕方が変われば、同じ品種の印象も変わります。

シャトー酒折で撮影したブドウの房と葉、房を包む白い袋
2026年8月12日、シャトー酒折で著者が撮影したブドウの房と葉、白い袋。品種や栽培地、完成ワインの香りは写真から特定していません。

目の前の果実と、グラスの香りは一本の線でつながっています。
ただし写真の房から、どんな香りのワインができたかを断定はできません。
ここでは「香りも畑の仕事から始まる」と想像するための写真です。

2|発酵と醸造も、香りを造る

酵母がブドウの糖を発酵させる過程では、アルコールだけでなく香りに関わる成分も生まれます。
また澱(底に沈んだ酵母など)との接触、マロラクティック変換、樽の使用など、発酵の後の仕事でも印象は変わります。
マロラクティック変換は、糖をアルコールにする酵母の発酵とは別に、菌が酸を変える働きです。WSETの講師向け資料(PDF、26〜27頁)は、澱との接触や、この変換が香りに関わる場合を説明しています。

「果物の香りがする=その果物を入れた」という意味ではありません。
ブドウやワインと、別の果物や花に共通する香りの成分もあり、それを身近な言葉で表しているのです。WSETの2026年解説も、香りの成分を感じることと、その果物が実際に入っていることを分けています。
香りの言葉は、原材料欄ではなく、感覚を共有するための橋になります。

香りの表現は、物が入っている証明ではなく、鼻で感じた印象の言葉です。

3|時間の中で、香りも動く

熟成の間、若いワインで目立っていた果実や花の印象が変わったり、別の香りが現れたりします。
ただし、時間をかければどんなワインも複雑になるわけではありません。
WSETの熟成解説も、若い果実の香りが変化し得ることと、熟成に向くワインが限られることを説明しています。

気になる印象まず思い浮かべる入口注意したいこと
果物・花を連想ブドウや発酵品種や産地を断定しない
パンやバターを連想発酵後の造り実際に材料を入れたとは限らない
木やナッツを連想樽・時間など同じ香りに複数の原因がある

専門家の分類では「一次・二次・三次香」という整理もあります。
ただ、ここで使った「ブドウ・発酵・熟成」の3つと、用語の境界が完全に一対一ではありません。
WSETのテイスティング資料でも、一次香にはブドウとアルコール発酵の香りが含まれます。
まずは用語を覚えるより、香りが重なって生まれることを知ってください。

自分の言葉を、次の1本に持っていく

「白い花が分からない」ときは、「花屋のよう」「青い感じ」「果物っぽい」でも大丈夫。
もっと言えば「落ち着く香り」「強すぎない」も、自分の買い物には役立ちます。

香りの言葉に迷ったら、どんな条件で嗅ぎ、何を思い出したかも書き添えてみましょう。
一人の感想を正解として押しつけない。
その姿勢は、文化を味わうときのやさしい作法でもあると思います。

ヒント

香りのメモは「何を思い出したか」「強いか穏やかか」「また感じたいか」の3つで十分。後から公式説明と見比べても、自分の感覚を消さないでください。

造りの流れは畑から瓶までのワイン造り、木材の香りと容器の関係は樽とステンレスタンクで追えます。

まとめ|香りを3つの入口から聞く

香りは、ブドウ、醸造、時間が重なった結果として感じられます。

  1. ブドウは、香りの成分やその材料を持つ
  2. 発酵や醸造の仕事でも、香りは生まれたり変わったりする
  3. 熟成で香りは変わるが、長く置けば必ず良くなるわけではない

もう一度、左右と中央の3つの箱から、下のグラスへ目を移してみてください。果物らしい香りにも発酵が関わると分かった今なら、箱を別々の正解欄にせず、重なる入口として読めます。

ブドウと畑、発酵と醸造、熟成と時間という香りの3つの入口を示す概念図
左のブドウ、中央の醸造、右の時間から、下のグラスで感じる香りへつなぐ図です。1つの香りに原因を1つ割り当てる図でも、一次・二次・三次香をそのまま並べた図でもありません。

ブドウ、発酵、熟成。
次のグラスで香りを1つ見つけたら、名前を当てる前に「どの仕事や時間が関わったのかな」と考えてみてください。
分からなくても、その問いを持てたら十分に一杯が面白くなります😊

公式情報・参照日

参照日:2026年10月19日