こんにちはᐕ)ฅ
「ウィスキーは2回蒸溜する」と聞くと、同じ作業を念のためもう一度やっているように見えます。
でも料理を二度温める話ではないと知り、工程図を前に腕を組み始めたわっちゃです😎
モルトウィスキーの一般的な2回蒸溜では、発酵を終えたウォッシュをまず初溜釜へ入れます。
そこで得られる留液が、ローワインです。
透明ではあっても、まだ樽へ詰めるニューメイクではありません。
アルコールだけを純粋に取り出した液体でもありません。
ローワインは、発酵の成果を1回目の蒸溜で集め、2回目の蒸溜へ手渡す「中継走者」です。
この途中の液体を知ると、2回蒸溜が単なる繰り返しではなく、役割分担だと見えてきます。

上段を左からたどると、ローワインは初溜と再溜の間にあります。下段は再溜で採り分ける留分の行き先です。冷却器などを省いた概念図なので、実際の設備配置とは分けて見てください。
ローワインを先に3行で整理する
最初に、迷いやすい位置関係を並べます。
- 発酵を終えたウォッシュを初溜釜で蒸溜する
- 得られた留液をローワインと呼ぶ
- ローワインなどを再溜釜へ送り、次の蒸溜でニューメイクの中心部分を選ぶ
ローワインは瓶に入る商品名ではなく、製造工程の言葉です。
バーで「ローワインを一杯」と頼むものではありません(それは店員さんも少し困る😇)。
流れ
- 麦汁を発酵させてウォッシュを作る
- 初溜釜で1回目の蒸溜を行う
- ローワインとして次へ集める
- 再溜釜で2回目の蒸溜を行う
- 中心部分をニューメイクとして樽へ送る
1回目の蒸溜は、完成品を選ぶ作業ではない
発酵を終えたウォッシュには、水、アルコール、発酵由来のさまざまな成分が含まれます。
初溜では加熱によって蒸気を生み、冷却して再び液体へ戻します。
これにより、次の蒸溜へ送るアルコールと香味成分を集めます。
英国政府掲載のスコッチ製造技術資料では、モルトウィスキーの一般的な工程として、ウォッシュスチルで得たローワインをスピリットスチルで再び蒸溜する流れを説明しています(2019年版「Malt Scotch Whisky」節・2026年9月28日確認)。
ここで大切なのは、初溜だけで「良い香りだけを完璧に選び終える」と考えないことです。
1回目は広く受け取り、2回目で樽へ渡す中心を見極める。
二つの釜は、同じ答案を二度採点しているのではなく、別の問いを担当しています。
「low」は品質が低いという意味ではない
ローワインのlowは、完成したスピリッツと比べてアルコール度数が低い中間留液を指す言葉です。
低級品、出来の悪い原酒、薄いウィスキーという意味ではありません。
そもそも、この段階では熟成前のウィスキーですらなく、工程の途中です。
数字は蒸溜所や設備、操業条件によって異なるため、特定の度数を世界共通の正解として覚える必要もありません。
見るべきなのは、次の3点です。
- どの発酵液を初溜へ入れたか
- 初溜でどの範囲を次へ集めるか
- 再溜時に前後の留分をどう組み合わせるか
設備の数字は、結果を格付けする札ではありません。
造り手が再現したい原酒へ近づくための条件です。
再溜では「真ん中」だけを孤立させない
2回目の蒸溜では、流れ出る留液を大きく前半、中心、後半へ分けて考えます。
中心部分は一般にハートやミドルカットと呼ばれ、樽詰めするニューメイクの核になります。
前後の留分は、そのまま商品から捨て去られるだけとは限らず、次回以降の蒸溜へ戻して利用される場合があります。
つまり再溜釜へ入るものは、単純なローワインだけとは限りません。
蒸溜所の運用によって、前回のフェインツなどが合流します。

ここが面白いところです。
一回の蒸溜を一本の直線として見ると、前半と後半は「不要部分」に見えます。
しかし循環として見ると、次の仕込みへ香味とアルコールを返す材料になります。
補足
フォアショッツ、ハート、フェインツの名称や区切り方は、説明する国・蒸溜所・資料によって表現が異なります。個別の製法は各社の公式情報を優先してください。
2回蒸溜と3回蒸溜を順位にしない
ローワインを知ると、「2回より3回の方が丁寧なのでは?」という疑問も生まれます。
でも蒸溜回数は、手間の点数表ではありません。
3回蒸溜では、中間に別の留液と釜が加わり、アルコールや香味成分の分かれ方も変わります。
2回蒸溜でも、釜の形、加熱、還流、カット、冷却器、銅との接触で設計は変わります。
回数が多いほど高品質なのではなく、どんな原酒を目指して工程を組んだかが本題です。
見学では、釜と釜の「間」を見る
蒸溜所見学では、大きな銅製ポットスチルへ目が吸い寄せられます。
当然です。あれは格好いい。反則級に格好いい🤣
ただ、次に訪ねるなら、釜同士をつなぐ流れにも注目してみてください。
- 初溜釜と再溜釜はどれか
- ローワインはどこへ集められるか
- 前回の留分はどこで合流するか
- 蒸溜器の容量や形は同じか
- 再溜の中心部分をどう確認するか
設備の間を見れば、製造工程が写真の集合ではなく、液体の旅としてつながります。
暮らしへ持ち帰れるのは「途中で評価しない」視点
ローワインは、飲んで完成度を採点するためのものではありません。
次の工程が働ける状態へ整える途中の成果です。
これは料理や仕事にも似ています。
下ごしらえの玉ねぎを見て、完成したカレーとして評価しても仕方がない。
粗い企画メモを、公開原稿と同じ基準で切り捨てれば芽が消えます。
途中のものには、途中の役割がある。完成品の物差しを早く当てすぎない。
ウィスキー造りから、そんな地味で強い視点まで持ち帰れます。

まとめ|ローワインは、次へ渡すための液体
ローワインは、ウォッシュを1回蒸溜して得られる中間の留液です。

最後は上段のローワインから再溜釜へ進み、下段の行き先を見比べましょう。ハートは樽へ、前後の留分は次の蒸溜へ。ローワインは、この採り分けへつなぐ中間地点です。
- 初溜は発酵の成果を次へ集める
- ローワインは再溜を待つ途中の液体
- 再溜で樽へ送る中心部分を選ぶ
- 前後の留分も次回へ循環する場合がある
- 蒸溜回数や度数だけで品質を決めない
今度、蒸溜器の写真を見たら、銅色の美しさだけで終わらず、その釜から出た液体が次にどこへ行くかを追ってみてください。
一杯の中に、完成品だけでは見えなかった「受け渡しの仕事」が立ち上がってきますよ…!
公式情報・参照日
- 英国政府掲載「Scotch Whisky Technical File」2019年版・Malt Scotch Whisky節(2026年9月28日確認。初溜・再溜・留分の回収を参照)
- Bruichladdich Distillery「Glossary of Whisky Words」(2026年9月28日確認。Hydrometer・New-make Spiritの項を参照)
- Scotch Whisky Association「How Scotch Whisky is made」(2026年9月28日確認。製造工程への入門案内)




